質屋のヒミツ

質屋さんのいろいろなお仕事。

Ci vediamo!

あらかた聞いたことは書いてしまったかな、と読み返してみる。
質屋や買取店は、あまり馴染みがないかもしれないけれど、うまく使えば断捨離の助けにもなる。必要なものと不要なものを見極める機会としても、有益な存在だと思う。


今回は、初めてのブログだった。文章も、読みづらいところが多々あったかもしれない。それでも読んでくださった方には、感謝しかない。
このブログでは、話してくださった方々の身元が知られないよう配慮したつもりだ。買取店には組織的なネットワークは少ないが、質屋には「組合」と呼ばれる枠組みがあり、その中には有料の情報も多く存在するそうだ。そして何より、この業界は、あまり表に出ることを好まない。そうした背景もあり、コメント機能は設けず、静かに綴ることにした。


本当は、もっと多くの質問や疑問を聞いてみたかった。でも、それはまた次の機会に。
このブログは、ここで一度休止とする。そして、何か動きがあった時には、静かに再開できればと思う。もしかしたら、別の場所で、別のアカウントで、またどこかでお会いできるかもしれない。その時気づいてくれたら嬉しい(それが愛人を社員にした店の事件でないことを願う……)。


自分には他にもいくつか好きなことがあるので、もしかすると知らず知らず、何らかの形で再会するかもしれない。
あなたの毎日が、ご機嫌な気持ちで満たされますように。
ありがとうございました。またいつか。

社長さん

買取店の社長には、フランチャイズやチェーンが多いが、今回は質屋の話になる。私が話を聞いたのは、A、B、Cさん以外にも2〜3名程度なので、どうしても偏りが出ることは最初に断っておく。


質屋の社長は、ほとんどが世襲。今や“初代”と呼べる社長は少なく、2〜3代目が多いだろう。
世襲だからといって甘やかされず、都会へ修行に出された人や、一般企業で一度就職してから家業に戻った人もいる。一方で、「どうせ継ぐんだから好きにしろ」と放任されるケースもあるらしく、後々困るのはこのタイプ。
本業そっちのけで趣味の店を始め、経営がうまくいかず結局質屋に戻る。……という、世間知らずな流れもあるようだ。しかも本人は「自分は常識人」だと信じて疑わないとしたら……絶対に関わりたくない人物になる。

質屋の勉強会で起きたこと。それは、ある種「社長という生きもの」の観察記録のようだった。

隣に座った社長サンから挨拶を受け、名刺交換をしたその瞬間、いきなり開口一番「いや~なかなか業績が振るわなくてねえ。俺の社員、むちゃくちゃ使えねえんだよ」と言われたそうだ。横にはその社員がいるというのに、だ。

そんな言葉、実際に聞いたら誰だって絶句する。本人は気づいていないのかもしれないが、それは「私は仕事ができない社長です」と大声で叫んでいるようなもの。笑ってしまいそうになったが、隣にいる社員のことを思えば、むしろ笑えなかったという。


ほどなくしてその社長は中途退席してしまったが、その後の休憩時間に、残された社員と少し外で話すことができた。話をしてみると、ごく普通の人だったという。案の定、あの社長はいつもあんな調子らしく、「社長の言う通りにすると、すぐ赤字になるんです。社員みんなで反対しないといけなくて」とこぼしていた。たとえば、地方の小さな会社にもかかわらず全国広告を打とうとしたり、変な代理店と3年契約を結び、毎年200万も広告費に使ってしまったり。やっとその広告を止めたと思ったら今度は「アメリカやアジアに店を出したい」と言い出し、どこに何を送っているのかも社員にはわからない。通販で謎の仕入れをしては送付を繰り返し、経理は出鱈目で、社員の抵抗と努力でなんとか利益を出しても、最初に削られるのは給料とボーナスなのだとか。「もう辞めようかな……」というその一言に、すべてが詰まっていた。


この話を聞いていたら、他の受講者たちも黙っていられなくなったのか、次々と語り始めた。「うちの社長さ、中古カメラの転売が儲かるっていうネット講座に引っかかって、ヤフオクで買いまくってたんだよ。しかも店の金まで使ってさ。素人が買い付けたレンズだから、カビがあっても気づかずに売ろうとするし、当然売れないし、売れなくて赤字になったら社員に『もっと頑張れ』って。あれに首突っ込まなきゃマイナスにならなかったのに!次はメルカリやりたいとか言ってる。殴りたい」と。別の人は「うちの社長は女性なんだけど、めちゃくちゃケチで、ものすごく疑り深い。自分でどこかに置いたものを見つけられないと、すぐ『盗られた!』って騒ぎ出す。でも、結局自室から出てきたりする。そんなに疑うなら、人なんか雇わなきゃいいのに」と言う。

他にやっぱり本業をそっちのけで、儲け話に誘われてしまい、結局詐欺だったり……。など。お金持ちだからとてお金はもっともっと欲しくなるものらしい。


みんな、相当うっぷんが溜まっていたようだった。

自分に話してくれた彼は、「質屋の社長って、世襲が多いから、もともと金があるところからスタートしてる人がほとんどなんですよ。だからちょっと壊れてる人も多くて」と。確かに、先ほどの話は「ちょっと」の範疇ではなかったけれど、では「ちょっと壊れてる」というのはどういうタイプかと聞けば、

「まず、質屋の社長には離婚歴がある人が多いと思います。他業種より確実に多いんじゃないかな。あと、「金で何とかなる」と思っている人が意外といる。しかも無自覚。そして、高圧的な態度を取る人も多いです。これもまた無自覚なんだけど」と返ってきた。
つまり、本人が「嫌な金持ち」であることに気づいていないというのが問題なのだ。幼少期からそうなら、まさに「三つ子の魂百まで」である。


さらに別の人が語った話がまた強烈だった。「愛人を『社員』として雇って、一緒にいる社長がいました」

それを聞いて耳を疑ったが、どうやら元々愛人だった人を、面接して採用していると。他の社員もなんとなくみんな知っているとか。それ「ちょっと壊れてる」じゃないだろう!と突っ込みを忘れて続きを聞いてしまった。

社内でのそれは、絶対に本人たち以外も気づくというのは理解できる。むしろよく秘密にできていると思えるほどに社内の「そういう空気」はわかりやすい。それでも奥様は……さすがにどうなんだろう?本当に気づいていないのか?と疑いたくなる。


「強盗より先に、痴情のもつれで事件にならないか、一番気になってる店ですね」というセリフが印象に残る。
その社長が関わるトラブルの続報が、全国ニュースで流れる日が来たら。

このブログを思い出してください。

…続く

出入り禁止

一見平穏な日常では、「出入り禁止」など縁のない言葉のように感じる。しかし質屋や買取店では、こうした措置が日常的に行われているという。強盗犯はもちろん、協力者や盗品の持ち込み者など、犯罪に関与した人物は出入り禁止となる。多くの場合、警察からの連絡でその関与が明らかになる。


盗品に関しては、その場では判別できず、後日警察の調査や持ち主からの訴えにより発覚するケースもある。これにより、次回以降の来店は断られることになるが、「前は預かったのに!」と怒鳴る者もいる。まさに「盗人猛々しい」とはこのこと。曖昧な表現では察してもらえず、はっきり告げると逆上される恐れがある。スタッフは来店前から対応に悩まされ、恫喝に慣れているとはいえ、大人の怒鳴り声には相当なストレスが伴う。
また、常連客が他所で事件を起こし、その店が巻き込まれる可能性もある。だからこそ、万が一に備えて警戒心を常に持ち、冷静に対応する覚悟が必要とされる。これは容易ではない。
こうした、ある意味“危険をはらむ日常”に比べると、「仕事以外の心配をしなくてもいい」環境で働けるのは、実にありがたいことだ。刑務官、警備員、警察官、救助隊員、消防隊員、自衛官など、危険と隣り合わせの職業の方々が抱えるストレスは想像を超える。危険手当が支給される職場もあるが、質屋や買取店のスタッフにはその保障がない場合も多い。
現代では、大人が他の大人に怒鳴るという非日常が、一部の職場では日常化している。まともな感性を持っていれば、それが異常であることはすぐに分かるだろう。それでも、その異常を「日常」として引き受けざるを得ない現場には、もっと光が当てられてもよいのではないか。

 

昨今では、会社員でさえ同僚に刺されるというような衝撃的な事件も起きており、自衛という意識が以前よりも強く求められるようになった。
パワハラ対策としては、小型の録音機やカメラが売れていると聞く。証拠を集める目的だが、それ以前に「害されないこと」が何より重要だ。A氏やB氏に対策を尋ねたところ、防犯用カラーボール、非常ベル、逃走経路、さすまたやバット程度しかなく、物理的な備えには限界があるという。強化ガラスもバールで破られる可能性がある以上、結局「逃げるしかない」のが現実だ。
B氏は「対面する客が危険でない仕事であれば、何でもできそうです。もう一般人の怒鳴り声なんて怖くありません」と語り、現在は別の職に就いたそうだ。おめでたい話だ。

宮口幸治氏の著書『ケーキの切れない非行少年たち』には、質屋の客層に通じる要素を感じる。思考力や共感力の欠如が、行動の理解を難しくしているという指摘は、現場の困難に通じるものがある。


こうした視点が広まり、日本の接客業に従事する人々「世界一丁寧な店員」と称される彼らが、少しでも働きやすい環境へと導かれることを願ってやまない。

とりあえず、選挙へ行こう。

…続く

 

小金の錬金術師

A氏の店に来るTさん(仮)は土建会社の社長をしていた。まだ金がプラチナの3分の1ほどの価値だった頃、フィリピンと日本を行き来しながら金を買い、日本で売ることで財を築いた人物だ。羽振りの良い時期には、3人の愛人を連れて楽しげに店へ現れ、豪快に買い物をしていたという。


フィリピンでは一部地域で金の採掘が盛んで、地元の鉱山労働者や業者から直接購入するケースが多かったようだ。当時は国際相場よりも金の価格が安く、現地通貨(ペソ)での取引が有利だったという。


遊び半分だったのかもしれないが、やはり金を稼げる人間には行動力がある。「まずやってみる」――その姿勢が重要なのだろう。もっとも、自分はその結果として失敗した人も数多く見てきたので、軽々しく「行動」を勧めることはしない。結局、たまたま行動した成功者だけが目立つというだけの話である。


おそらくTさんは老後の資金としてそこそこ稼いだのだろう。悠々自適の暮らしを送っているかと思いきや――最終的には本妻に見限られ、財産を失い、優しい愛人の一人のマンションに転がり込んで面倒を見てもらっている、という結末だった。


その話を聞いたときは言葉が出なかったが、A氏は「よくある話ですよ」とさらりと流した。本妻を蔑ろにした報いといえばそれまでだが、同情の余地はない。世の中には6回も結婚する猛者もいるらしく、一度離婚された程度では珍しいことではないらしい。
6回も結婚するのも凄いが、5回も離婚する方がさらに凄い気がする。精神的にタフで、よほどモテる男性なのだろう。「相手を選ばなければ、何度でもできますよ」とA氏は言っていた。……まあ、そういうことなのかもしれない。


それにしても、あまりにドラマチックだ。どうしてこんなに濃密な人生を送る人が多いのだろう。まるで「ザ・ドキュメンタリー」の主役が次々と現れるような話ばかりだ。
プロスポーツ選手だったが、手癖の悪さで解雇されチンピラになった人。風俗店を経営していた社長が愛人に金を持ち逃げされ会社が傾いた話。人気占い師が出来心で詐欺罪に問われ転落したケース――いずれも人間臭く、濃すぎる。


皆、最初はそこそこ稼げていた。しかし、本人の性質や周囲の影響で運命が大きく狂ってしまった。自分も転職を三度経験しているが、ここまでの辛い展開には至っていない。これはただ運良く、何事もなく、穏やかに暮らしてこられただけなのかもしれない。
「自分の器以上を望むと不幸になる」と言われることもあるが、自分はそうは思わない。望みたいだけ望み、努力して手に入れればいい。限界を決めるのは、いつだって自分自身だ。

…続く

質屋で買い物

いきなり涼しくなったせいか、ワクチン接種で不機嫌だったうちの猫も、なんやかんやで一緒に寝てくれた。いや、正確には寝かされたと言うべきか。気温の低い日は、夜10時になると寝床へ誘うように鳴き始めるのだ。家族からは「うるさいから早く寝てやって」と促され、私は仕方なくベッドへ。ちょっとだけPCを触ってから寝たいのに、世の中、そう思い通りにはいかないものである。
そんなわけで昨日は早々にリタイアしました。すみません。


言い訳はこのくらいにして……。

昨日はA氏の店でサマーセールがあったので、こっそりと覗いてきた。もちろん私の手が届くような廉価品はなく、ただただ他の客の観察に徹することに。これがなかなか面白かったので、今回はその様子を書いてみる。


まず目についたのは、賑やかな外国人女性の3人組。セール品をさらに値切ろうと奮闘していたが、無理だと言われるとあっさり引き下がった。その潔さに、意外と粘らないものなのだなあと妙に感心。


続いて、日本人の夫婦。夫は静かなる荷物持ちとして、存在感を消して妻に付き従う。妻はまるで大地真央のような華やかさ。「テニスブレスレットをゴルフ場で落としちゃって、同じくらいのが欲しいの」と店員に相談中。ちなみにテニスブレスレットとは、ダイヤが連なった高価なブレスレット。おそらく、その従順な旦那様が前回購入されたのだろうが、目の前で「落としちゃった」はちょっと……デリカシーが欠けている気も。旦那様のメンタルが心配になる。


その次は、高齢の女性と若い男性。どうやら祖母と孫らしい。若い男性が「おばあちゃん、これがいい」と高級バッグをねだり、おばあちゃんはニコニコとそれを購入してあげている。うーん……私の祖母なら、「そんなもん自分で働いて買え!」と一喝していたと思う。皆さんのおばあちゃんは、優しい方だっただろうか?


そして、明らかに社長とその愛人と思しきカップルが登場。ブラックカードで颯爽とお買い物。愛人さんは、10センチヒールにタイトスカート、肩出しトップスと、いかにも水商売風。購入されたのはロレックス……レディースではなくボーイズタイプを選んでいたのは、もしかすると将来的な転売を考慮して……いや、考えすぎだろうか。


一方で、控えめな雰囲気の女性が大胆なブランド財布を選んでいたり、逆に派手な印象の方が落ち着いたバッグを選んでいたり、ファッションの奥深さを感じずにはいられない。


私はというと、宝くじが当たったら買えるかもなぁ…などと夢を見つつ、店内をうろついていると、
「これ、まとめて買うんで、もっと安くなりませんか?」という声が聞こえ、つい耳がそちらへ。申し訳ないが、少し柄の悪そうな若い男性が、貴金属をいくつかトレイに並べて価格交渉を始めていた。すでにセール価格が付いているのに、さらに値切るとは……。店員曰く「金は今、値上がり傾向なので安くはできません」との返答。それでも「そこをなんとか」と食い下がる。何度か粘ったが、結局は「値下げ不可」と断られ、「もう来ねえよ!」と捨て台詞を吐いて退店。


たぶんもう一度来たとしても、絶対に値引きはされないだろうな……。


こうした人たちは、自ら世界を狭めてしまっていることに気づいていない。少しずつでも関係を築いていけば、「じゃあ特別に」ということが起きるかもしれないし、今回は無理でも、次回には有益な情報を得られる可能性もある。
親切な接客に暴言を吐いて「もう来ない」と言っても、実際はその人が“行けなくなる”だけ。


誰とでも仲良くすべし、とは言わない。でも、自らケンカを売る必要もない。相手を慮る行為は、人間だけが持てる知性によるもの。だからこそ尊い


最後に、家族へのお土産に予算内で見繕ってもらい、一つピアスを購入。「ゴルフはしないので、無くすことはないでしょう」と言うと、A氏は笑って「もし失くしたら、またいらしてください。お待ちしてますよ!」と。


それだけは、勘弁していただきたい。

…続く

質屋通い

常連さんにはどういった人がいるのか、聞いてみた。

ある程度は予想していた通り、趣味にギャンブルを持つ人が多いという。競馬、競輪、パチンコとさまざまだが、一番多いのはパチンコ客だそうだ。ATM感覚で出したり入れたりと、忙しそうにしている人が多いらしい。

男性なら、つけていた時計を外して預けていく人が多く、女性なら指輪、あるいは預ける用に小袋に入れた貴金属を持参する。年金生活の無聊を慰めるためならまだしも、50代前後でどっぷりハマっているのを見ると、店員も「大丈夫かな」と思うことがあるそうだ。お金がないなら、スマホの無料ゲームの方がいいのではないか。ちょうどよく飽きもくるし……。とはいえ、好きなものは仕方がない。

同僚に聞くと、居酒屋と同じで、通っているうちに顔なじみができて、ちょっと楽しいのだという。結局のところ、人とのコミュニケーションを楽しみに行っているのかもしれない。

私自身は、大人になってから1、2回付き合いで行った程度なので、パチンコについて語れることはない。ただ、どんなことでも、やればやったで奥が深いのだろう。発祥の地・韓国ではほぼ廃れてしまったパチンコが、日本では根強く愛されているのだから、きっとこの国の土壌に合った理由があるのだと思う。

そのパチンコに行くため、あるいは続けるために質入れをして、勝ったら受け出す。利息は月単位なので、1日2日で出し入れすると利息ばかり損をすることになるが、4〜5千円借りていくと数百円の利息で済むため、借りる側はあまり気にしないようだ。

質屋としてはそれで利益になるとはいえ、常連さんにあまり損はしてほしくない。でも、遊びに行くのにケチをつけるのも野暮なので、何も言わずに送り出す。

勝ったときは、勝ち誇った顔で品物を受け出していく。負けたときは、しばらく来なくなる。そして次に挽回できればいいが、負けが続くと、利息を払って流質期限を延ばすか、ぱったりと来なくなり、そのまま品物は流れてしまう。

「風雲流水の趣だねえ」と言ったら、「風流ですね」と笑われた。実際は、風流とは真逆の世界だ。勝負の厳しさ。運の良し悪しは、金ではどうにもならない。

地獄を見るまで借金を繰り返して遊ぶ人も昔からいるが、質屋の借金は期限付きなので、そこまで深みにハマることは少ない。

ただ、思い切りが悪いと、長くなる。

たとえば、指輪を預ける。流質期限までに出せず、1か月、また1か月と利息を払い続け、気づけばもう何年も……。指輪が買えてしまうくらい利息を払い続けている、という事態になる。地獄というほどではないが、さっさと流して積立貯金でもしていれば、新しい指輪が買えたかもしれない。

質屋に通う人は、このあたりの意識が低いのかもしれない。

「手軽に借りられる」「利息なんてほんのちょっと」そうは言っても、借金は借金だ。取り立てがない分、気は楽かもしれないが、確実に資産は減っていく。

そのうち物もなくなって、質屋にも来られなくなる。その人にとって、それが良かったのか悪かったのかはわからないが、借金などしないに越したことはない。身内にギャンブラーがいる家庭は、大変だろうと思う。

「地獄を見てそうなお客はいた?」と聞いてみたら、「もしかして……」と思うような人はちらほらいたそうだ。預けてきた品物の中にあった財布に、ローン会社の借用書が何社分も入っていた人とか(借用書は抜いて返した)。どうやら借金取りに差し押さえられないよう、質屋に物を預けておこうと思ったらしい。

その人は結局、受け出せずに品物は流れてしまったそうだが、もし出せていたら、また何かが変わっていたのかもしれない。

「今なら一年間金利ゼロ!」なんてうたっているキャッシング会社もあるが、聞くだけで怖い。しかも、こちらは質屋と違って取り立てがある。

このブログを読んでいる皆さんには縁遠い話だと思うが、金を借りるのは極力やめた方がいい。大げさに聞こえるかもしれないが、破滅の入り口は、日常の中に、何気ない顔をしてぽっかりと口を開けている。

ゆめゆめ忘れることなかれ、である。

…続く

闇バイト

「楽して儲かるもんなんか無い」
ある程度の年齢になれば、死ぬほど身に染みてわかることだ。だが、若い子……特に、バイトくらいしかしたことのない成人なりたての子どもたちが一番危ない。
データ上では、「若年層」かつ「経済的に不安定な層」が中心とされる。だが、家庭の豊かさ=安全とは限らない。情報リテラシーや社会経験の不足が、むしろリスク要因になる。
必ずしも貧困層ではないというのが、いかにも現代的な構図だ。
「遊ぶ金欲しさに、楽なバイトを探していたらたどり着いた」そんな軽い動機で始まることもある。これは、「まだ子供」である若年層の隙を突いた事件だと言える。

闇バイトといえば、強盗への加担が有名だが、もっと気軽に見えるものもある。たとえば、買取店や質屋に「偽物」や「盗品」を売りに行くというものだ。
もちろん、品物は本人のものではない。誰かから依頼されて売りに行き、現金に換える。
「売るだけなら大丈夫」と気軽に引き受けてしまうのだろう。
だが、買取店や質屋では、売却時に必ず身分証の提示とコピーが求められる。つまり、「誰が売りに来たか」は、ばっちり記録に残る。
闇バイトの依頼主は、こうした記録を恐れて、自分では動かず、他人にやらせる。
そして、売りに行った側は、何の疑いもなく免許証や保険証を差し出してしまう。
もしそれが盗品だった場合、重要参考人になるのは間違いない。
ニュースになれば、実名報道される可能性もある。
20代前半で、社会的に「死亡」しかねない。

最近の子が…というより、最近の大人が…というべきか。
とんでもないバイトを生み出してしまったものだ。

匿名性の高いSNSが悪いのか。
それを利用して搾取する大人が悪いのか。
想像力の乏しい若年層が悪いのか。
あるいは、貧困が悪いのか。

答えは一つではない。だが、確かなのは、抜け出せなくなる前に気づくことが大切だということだ。

盗品やコピー品をそわそわしながら売りに行き、うまくいったとしても、あなたの個人情報はすでに握られているかもしれない。
そんな泥沼に、どれだけの若者がはまり込んでいるのだろうか。

これは闇バイトだと気づいたら、一刻も早く警察に相談しよう。
いくら相手が悪人でも、あなたを下請けに出している時点で、殺し屋を雇うような余力はない。恐れずにいてほしい。

親にも言えずに震えているくらいなら、まずは警察だ。

買取店や質屋には、業界内のネットワークがある。
どう見ても換金できそうな品物なのに、何件かに断られたら、もうバレていると思った方がいい。

闇バイトで雇われているのなら、そのことも含めて、警察に正直に話そう。
警察は、あなたのタレコミを待っている。

貧困が貴方の心を揺さぶったのならまだ元に戻れる。けれど特に困っていないのにただ遊ぶ金が欲しかったという人は、人間的に大丈夫かと思ってしまう。

養老孟子さんだったか、「成熟とは、思い通りにならないことを受け入れる力だ」と仰っていたと記憶している。何でも望めば手に入ると思っている若者が増えている。何でも望んで手に入っていたら宝くじなんか買うか。

 

酒も飲みなよ 遊びもしなよ 稼いだ金の はしただけ 

なんでもちょうどいいのが、よろしいかと。

 

…続く