いただかれオヤジ
「いただき女子」という、なかなかに強烈なワードが話題になったのを覚えている方も多いだろう。
「好きな人に貢ぎたい」という純粋な気持ちを利用された。そんな構図で報じられた事件だった。
たしかに、本命の男がいるのに、別の男性に結婚を匂わせて高額な贈り物を引き出すのは、詐欺的だ。よくある結婚詐欺の手口と似ているし、法的にも問題があるのだろう。
けれど、正直に言って、私はいまだに少し違和感を拭えない。
なにが、どこまで、どのように悪かったのだろうか。
もちろん、騙された側の男性に同情の余地がないとは言わない。
だが、「騙された」と声高に叫ぶその姿に、どこか器の小ささを感じてしまうのも事実だ。金が惜しいなら、最初から度を超えた贈り物などしなければいい。
「クレクレ」に下心満載で応じてしまった自分ののぼせぶりは棚に上げて、
「相手に要求されたから」と人のせいにするのは、大人の男としてどうなのだろう。
惚れてたんだから、いいじゃないか。
推し活が終わった。それで楽しかったなら、それでよかったじゃないか。
一時気分を良くしてくれた、高いセミナー料金だったと思えばいい。
女性に騙されてしまった男。
騙された本人には黒歴史になるだろうが、少なくとも女性を騙す男よりは、だんぜんかっこいいと思う。
そんな話をしていたら、B氏がぽつりと言った。
「いただき女子って、昔からいましたよね」
私は首をかしげたが、B氏は続ける。
「ホステスがたくさんの客に同じものをねだって、1つだけ残してあとは換金するって話、聞いたことありませんか? 1つだけ残すのは、ちゃんと持ってるってアピールで」
ああ、たしかにそんな話を耳にしたことがある。
当時は買取専門店なんてなかったから、換金場所は質屋だったという。
バブル期、夜の街に繰り出す男たちは羽振りがよく、ホステスへの貢物も日常茶飯事だった。
B氏の店には、そんな時代を生き抜いた「元祖いただき女子」ともいえる女性たちが、今も数名いるという。
彼女たちはもう孫もいるような年齢だが、身だしなみに気を使い、可愛らしい言動で、男性にことのほかモテる。お金のある独身男性に寄り添い、世話を焼き、「いつもお世話になってるから」とプレゼントをもらう。
換金場所は、今もB氏の店だ。
彼女たちは、誰にも恨まれない。
むしろ、男性たちと楽しく過ごし、女性店員にも好かれているという。
人間、最後に残るのはコミュニケーション能力なのかもしれない。
「かわいいおばあちゃん」も、「かっこいいお爺さん」も、結局は人に好かれる力を持っている。
「いただき女子」という言葉に過剰反応する前に、
自分が何を求めていたのか、何を差し出したのか、
そしてその時間が本当に「損」だったのかを、少しだけ立ち止まって考えてみてもいいのではないか。
人はみな、誰かに何かを「いただき」、そして「与えて」生きているのだから。