質屋のヒミツ

質屋さんのいろいろなお仕事。

出張強盗

「うちはお金なんかないから……」などと言っている場合ではない。一人なら何かあるんじゃないか、襲いやすいんじゃないか……そんな単純な理由でも侵入されることがあるという。なのでどのお年寄りも、女性も男性も一人暮らしは気を付けるに越したことはなさそうである。


記憶では数年前に始まった「出張して買取いたします!」というシステム。買取店か質屋のどこかが始めたのかは定かではないが、文字通り、「店に来なくてもこちらから査定にうかがいます!」ということで人気が出た。着物などを持っていくのはなかなか大変で、貴金属ならいざ知らず、それ以外の大物は、断捨離を始めた高齢者にとっては重労働だ。そんなわけであっというまに全国に広がったのだが……。広がり切った今、弊害が出てきているようだ。


例を挙げると、着物を買い取ってくれると言うので頼んだら、どれもこれも断られて、挙句の果てに「貴金属は無いですか」と聞いてきた、とか。
「もうないよ」と言っても、「出してくれるまで帰れない」と居座り続ける、いわゆる押し売りならぬ「押し買い」の人たちだとか。
どうしようもないのは脅してくるというとんでもないものまであるとのこと。
これは、ちゃんとしている業者と、そうでない悪徳業者の見分けが容易でないということから起きているようだ。


トロール警官から、「不用品買取とかの訪問、電話やチラシには気を付けてください」と言われたことが記憶に新しい。どうやら強盗団もこういうものを最近出しているらしく、最初はちゃんとした業者を装って「下見」に入り、後日強盗として再来訪するというのが増えていると聞いた。物のありそうな家をあらかじめ下見して……それも合法的に入り込んで目を付けていく。褒めたくはないが、成功率は上がる。


ちなみにパソコンやスマホがあるなら、普通にインターネットで社名と「評判」などと入力すれば、悪評があれば出てくるはずだ。便利なようでいちいち調べないといけない世の中になった。うれしいやら悲しいやら、である。これがお年寄り、携帯やらを持たない世代にはどうにも障壁になる。


これが強盗のねらい目である。年寄りを狙っているのだから年寄りさえ騙せればいいのだ。恐ろしいことである。どうか親御さんが一人暮らしをしている方、自分のためにも暇を見つけては電話をして声を聞いたり、会いに行くだけでいいので顔を見て話をしてほしい。とくに物がある・ないに関わらず、防犯は要チェック。ちゃんと毎日鍵をかけているか、敷地に隙はないか。なんならカメラを設置して見守ってあげてとお願いしたい。年を取って酷い目に遭うなんて、一番辛いと思うのだ。


もしも盗難に遭ってしまった場合、警察に届を出す際、詳細な情報が必要になる。指輪なら、写真、重さ、刻印、鑑別書など。全部一覧にしておいてもいい。もう必要ないのなら、一番高く値段がついた買取店か質屋で処分し、お金に換えて貯金にでもしてしまおう。
実際近所のおばあさんが、大事にしていた指輪を盗難されたと騒いでいたが、認知症を疑われて、警察も受け付けてくれなかったという。悲しい話だ。いずれ老いは誰にでも来るから、他人事と思わず肝に命じておきたい。


弱者をいじめる風潮が本当に聞いていて悲しい。
質屋にくる老人たちは、かわいい孫のためにと、若いころにため込んだ貴金属を正月のお年玉のために換金していくという。こういう甘やかしもいけないんじゃないかなとB氏は言う。自分も爺さんと婆さんには怒鳴られたり叱られたりが多かった。しっかり褒められて、逆にしっかり怒られる経験がないとやっぱり良くないのかもしれない。そして子供をあまり物で釣る大人はいなかった気がする。
でも、今の子たちは自分の頃よりとんでもないいたずらをしない。全体的におとなしいと思う。親も怒る必要があまりないんだろう。
「優しい子」になるのが、なかなか難しい世の中だ。優しすぎても傷が増えるし……。周りも優しい人が多くないと。子育てをしている皆さん、本当にお疲れ様です。こうして悩んでいる皆さんのお子さんなら、きっと立派な人になれるはずです。


何もなくても子供たちから尊敬される爺さんになれるだろうか。
子どもより先に獣医に予防注射に連れて行ったら、嫌われてしまった猫からの信頼を、これから頑張って取り戻そうと思う。

…続く