査定とは…その6
貴金属は経年劣化が少ないため、質草(しちぐさ。質屋に預ける品物をこう呼ぶ)として非常に望ましい。バッグや靴、服飾品なども預けることはできるが、それらはできれば使用感のない新品に近いものが好ましい。資産価値の安定性という観点では、やはり貴金属が最も優れていると言える。
時計も貴金属に次いで資産性が高い品目だが、高級時計ともなると、オーバーホール代がかさむうえ、値上がりがいつまで続くか読めないという懸念もある。
最近では、ゲーム機やPC、スマートフォン、タブレットといったデジタル機器の持ち込みも増えているという。パスワードの扱いについて聞いてみると、基本的に初期化されていないと預かれないとのことだった。
「新品でないと、預かるのも預けるのも正直かなり面倒なんですよ。これは店によりますけどね。」
これはAさんの店という前提であるが、まず預ける側がやるべき準備として、
こうした作業を事前に済ませておかないと、店舗で査定に入る前に自宅へとんぼ返り…ということにもなりかねない。
次に店舗では、
- 傷や動作、OSのバージョン、バッテリー劣化の程度といった端末の状態
- 箱や充電器、保証書といった付属品の有無
を確認し、問題がなければ預かることができる。買取もこの流れとほぼ同じだ。
ゲーム機も同様に、初期化された状態で持ち込むことが前提となる。電源が入るか、付属品が揃っているかを確認し、そのうえで金額が決まる。
中には初期化不要という店舗も存在するらしいので、頑張って探してほしい。
それにしても、あれこれと預かるには神経を使う。蔵の中はどうなっているのかと尋ねると、
「24時間エアコンが稼働していて、ひんやりした大型金庫みたいな感じです。ドアも重たくて開けるのがなかなか大変ですよ。火災にも耐えられる造りだとか。」
との返答があった。ちなみに、この蔵こそが警察の公安のチェック対象だという。説明に自信がないとのことで自分でも調べてみた。
ざっくり言えば、古物営業法および質屋営業法に基づいた、安全管理と犯罪防止が目的である。
質屋という場所には日々さまざまな品が持ち込まれるが、その中には盗品や偽造品が混じっている可能性も否定できない。そうしたリスクに対応するため、質屋の営業には公安委員会の監督が不可欠であり、営業を開始するにはその許可を受けねばならない。これは法に基づく厳格な条件に基づいて審査される。
中でも「質蔵」は、預かった品を安全に管理するための要であり、特に入念な確認がなされる。蔵の管理体制が適切か、盗品を隠したり不正に処理されたりする恐れがないかを検証することで、盗品流通の防止が図られる。聞けば、少なくとも月に一度は警察官がチェックに訪れるという。
加えて、防犯設備の整備状況も審査対象となる。鍵の管理、防犯カメラの設置状況、出入りの記録など、セキュリティの水準が厳しく問われる。そして当然、質屋の営業許可を得るためには、質蔵の構造や立地も審査項目に含まれている。
要するに、質屋の蔵は単なる倉庫ではない。法律によって保護された「担保物の保管場所」としての性格を持ち、社会的な信頼と責任を支える場として、公安による厳しいチェックを受けているのだ。一般人として利用するかもしれない人間にとっては、安心安全な施設と言えるだろう。
つまり、「質屋」はある意味で公安に常に“疑われている”存在でもあるというわけである。
世知辛い世の中だな、と内心つぶやいた。日本は性善説の上に成り立っているとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。金が絡むと理想も信念もどこかへ飛んでしまうのだろうか。
「買取店」も公安のチェックはあるそうだが、質屋ほどではないそうだ。
ところで、Aさんは知人の紹介がきっかけとはいえ、どうやってこの世界に入ったのか。次回は査定から少し離れて、質屋さんの就職事情について尋ねてみようと思う。