質屋のヒミツ

質屋さんのいろいろなお仕事。

質屋さんに就職

Aさんは現在30代前半の独身男性で、前職は営業職だった。就職活動中、知人に「会わせたい人がいるんだけど」と誘われ、質屋業界に入ることになった。面接後すぐに入社が決まったものの、事前に業務の予備知識を得ようとしても、ネット上には具体的な仕事内容がほとんど出ておらず、困惑したという。

「査定してお金の出し入れをするのはわかるんですけど、仕事ってそれだけじゃないじゃないですか。細かいことを知りたくてもなかなか…。質屋の情報を探しても広告ばかりで、ブログを見つけたと思ったら『〇〇を〇〇円で買いました!』みたいなのばっかりで…。仕方ないから諦めてブランド雑誌を買って眺めていました。」

どうやら、知識をしっかり身につけてから働きたい真面目なタイプらしい。

「それで、知りたかったことは入ってわかったの?」
「はい。買取や質流れした品物を磨いて整えたり、値段をつけて店に並べたり、ネット掲載用に写真を撮ったり…。たまに勉強会にも参加します。別に隠すような仕事じゃないんですが、業務内容がほとんど公開されていないんですよね。まあ今となっては、特に載せるほどのことでもないのかと納得していますけど。」

 

「そういえば、質屋の求人ってあまり見かけないな。」
「ああ、それはですね、」とAさんが答えた。「募集をかけると、全員ではないですが、悪いことを考えている人が集まりやすいそうなんです。」

お金に困っている人、ブランド品を安く手に入れたい人、金融業だから給料が高いのではと思う人…。こうして理由が明らかになると、ある意味清々しいほど人間の欲望が見えてくる。

「でも、ブランド好きはダメなの? 覚えが早そうじゃない?」
「いえ、ブランド好きはいいんですが、好きすぎる人は品物が来たときに舞い上がってしまい、目が眩んで高値をつけがちというんです。自分はブランドにはまったく詳しくなくて、興味もなかったんですよ。でも、知らない間にいろいろチェックされていたんだなと、入社してから気づきました。そんなわけで、知識欲は高いけど、ブランドへの憧れは少ない…そんな同僚が多いですね。」

質屋ならではの知恵だろう。確かに、感情に左右されて値付けをすれば商売にならない。冷静さが欠けると、店の損失につながる。まあこれも店にもよるんだろう。

 

「質屋に就職したい人がいたら、どうアドバイスする?」
「そうですね。募集はほぼ無いのですが、人を入れたいなと思っている質屋さんもあるにはあるので、電話で募集がないか尋ねてみてもいいと思います。向いている人としては、計算が早いこと。物に執着しないこと。公私の区別がきちんとできること。お金にクリーンなこと。強面のお客も多いので、メンタルがやや強いこと。そして、何より真面目であること。 これは全部、オーナーに言われたことですけど。」

「やっぱりメンタルは大事?」
「カスハラってありますよね。客の言動で体調を崩すハラスメント。ものすごく罵倒されることもあれば、延々と嫌味を言われることもあります。たぶん、いろんな職業の中でもトップレベルじゃないですかね。」

だからこそ、精神的に弱い人や、うつ病のリスクがある人にはおすすめできない とのこと。どんな仕事も、きれいごとだけでは成り立たないのだろう。

 

収入については、店による。これは私自身の見分け方なので、読む人の判断に委ねるが、ひとつの参考として記しておく。社員として入りたい店があるなら、社長を見るのではなく、勤務している男性社員に妻子がいるか を確認するといい。家族を養える収入かどうかの目安になる。男性社員より女性社員が多い店なら、既婚者が多くても比較的給与は低めかもしれない。この傾向は、都会では異なるが、地方では当てはまることが多いだろう。本来金融業なのだから、着服などのトラブルを防ぐために、他の業種よりは高いというのが常識だと思うが…。なんせ個人事業種、多分ピンからキリまである。私は少なくともそう思っている。

Aさんの店は男性社員のみで、社員は若いAさん以外全員マイホーム持ちだそうだ。そう考えると、なかなか良い職場なのかもしれない。とはいえ、収入の話を直接聞くわけにもいかず、少しいやらしい話になってしまう。申し訳ない。

 

「達成感があるのって、どんな時?」
「ほかの店よりちょっと高く値をつけて、良い品の買取が成立した時ですね。勝負じゃないのに、『勝った!』と思うことがあります。」

楽しく仕事ができているのは、何よりだ。自分ももう少し楽しく毎日を過ごしてみようかな、と改めて思った。

 

仕事のことはひとまず置いておいて、まずはこの時期、猫のブラッシングをしよう。

 

…続く

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