神々たちの来店
今回は皆様おまちかね(かどうかは知らんけど)、店にやってくる「神様たち」をご紹介していこう。
こちらは、初回よりお世話になっているAさんの伝手により知り合った、質屋に勤務していたB氏から伺った話である。
客を悪く言うことは、本来好ましいことではない。
なのでこれは、「このような神様に出会わぬように」、また「自らがそのような神様とならぬように」との教訓を込めて、本稿にて紹介するものである。
あくまでも、これは神々の記録である。人間とは、異なる存在であることを念頭に置かれたい。
虚言命「マコトツクリシノミコト」
よく見かける神様である。
「親が亡くなった」「怪我をした/病気で行けない」「絶対〇日までに(金を)持ってくる」「未使用だよ」など、あらゆる嘘を器用に紡ぎ出す。
毎回のように言い訳を用意してくるため、信用は地に落ちたままである。
焦招之神「アセリマネキノカミ」
「時間ないんだよ、早くして!」「もたもたするな!」と主に査定を急かしまくる神。
しかし来店の理由は不明確で、時間がないのならそもそも来なければいいのでは…と誰もが思う。
質屋や買取店で怪しい品を持ち込んでくる確率の高い、いわば小悪神である。
無理言乃大神「ムリゴトノオオキミ」
「奥に在庫あるんでしょ?出してよ」「これ安くしてよ、どうせ売れないでしょ」「閉店?せっかく来たんだから、もうちょっといいでしょ」と、常識の範囲を超えた要求を当然のごとく述べる神。
ぞんざいに扱おうものなら、上記の焦招之神と同様、滞在時間が倍増する厄介な存在である。
昔来彦「ムカシキタヒコ」
「オーナーの知り合い」「よく買ってる」「昔から社長の奥さんと友達」と豪語するが、
長年勤める店員ですら顔を覚えていない謎の神。
虚言命の亜種のような存在で、過去の記憶を都合よく捏造してくるので注意が必要である。
見付大神「ミセツケノオオカミ」
査定中、じっと手元を睨みつけるかのように見つめ、入れ墨や欠けた指を意図的に見せつけてくる神。
B氏はこの神を、少々皮肉を込めて「ドジっ子神」と呼んでいた。
荒声命「アラコエノミコト」
大声を張り上げ、怒鳴り散らす荒ぶる神。
店員の話は一切聞かず、自分の言葉だけが絶対。
別名・讒詞命(ソシリノミコト)とも呼ばれ、誹謗中傷を糧に生きているとされる。
時計の査定時には「壊した!弁償しろ!」「手袋なしで触るな!傷がついた!」などと、言いがかりをつけてくることも。
(※査定時の手袋使用は店による。手触りを重視する査定人も存在する。)
戴姫「イタダキノヒメ」
女性神に多いが、稀に男神としての顕現もある。
とにかく同伴者に巧みに品物を買わせるのが得意。笑顔で店を後にするが、後日「○日に○○を買ったけど、鑑別書は?」と冷淡に連絡してくる(鑑別があると売買しやすい)。
実は中古品嫌いが多く、全ての購入品を「後で売る前提」で手に入れるという、ある意味「商売の神」である。
頭於可之乃御魂「アタマオカシノミタマ」
商品の値打ちには興味なく、買うこともほとんどない。
ただ、気に入った店員には賛辞を惜しまず浴びせ、気に入らない者には罵声をぶつけてくる。その振る舞いは理不尽の極み。この神に好かれても良いことは無い。
ほぼ購入を伴わないため、業界では“貧乏神の眷属”と見なされている。
以上が、店によく現れる代表的な神々である。
しかし、そんな神々の間にも、まれに仏が姿を現す。
仏は、店員にねぎらいの言葉をかけ、優しい微笑みをたたえる。ときに差し入れを持参し、怒鳴ることなく、用事が済めば静かに立ち去る。そうした仏の姿に触れると、店員たちは「何かしてあげたい」と心から思い、お茶を淹れたり、未発表のセール情報を伝えたり、探していた品の入荷をこっそり教えたりする。
たまには荒ぶる神々のように振る舞いたくなる時もあるかもしれない。
しかし我々は人であり、大人である以上、仏のように穏やかでなくとも、せめて「自分の機嫌は、自分で取る」存在でありたいものである。